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コラム

体験を売れ!とは【Webマーケティング考察】

現代社会において、商品やサービスを成功裏に販売するためには、従来の「モノ」に焦点を当てたマーケティング手法ではなく、顧客に対して体験価値を伝える「エクスペリエンス・マーケティング」が重要性を増しています。

藤村正宏氏は、10年以上前からエクスペリエンス・マーケティング(エクスマ)を提唱し、その考え方を企業のコンサルティングや講演活動、出版、SNSなどで広く発信しています。以下は、藤村正宏氏が執筆した「やっぱり!「モノ」を売るな!「体験」を売れ!」という書籍(出版元:株式会社実業之日本社)を読んで、Webマーケティングに関して考察した内容について述べたいと思います。

お客様が本当に欲しいのは「体験」であることに気づく

著者は、あるカップルのエピソードを通じて、お客様が本当に欲しいものは「モノ」ではなく「体験」であることに気づいたと言います。

クリスマスイブに高級ブティック店でカバンを買うことを求めて言い争うカップル。ディスカウントストアに行けば同じカバンが安く買えると主張する男性に対し、女性はどうしてもここで買いたいと泣き出してしまいました。

このカップルの女性は、実際に欲しかったのはカバン自体(モノ)ではなく、「クリスマスイブに彼氏と一緒にゴージャスな店内で女性店員に恭しく接客されてカバンを買ってもらう」という「体験」でした。このエピソードを通じて、著者はお客様が本当に欲しいと思っているものを理解せずに商品を提供しても、売上に繋がらないことを指摘しています。

モノの売り方の変革

従来の「モノ」の売り方では、商品のこだわりや技術力だけでは売れなくなってきています。著者は、例えば写真館が写真ではなく、「体験」を売ることで業績を上げていることを紹介しています。

成功している写真館は、単に優れた写真を提供するだけでなく、撮影過程の「体験」に注力しています。子供たちを楽しませ、自然な笑顔を引き出すための工夫や衣装を何度着替えてもOKなど、子供たちにとって思い出に残る体験を提供することに重点を置いています。

また、日本メーカーが液晶テレビ市場で韓国メーカーに敗北した事例も示されています。日本メーカーは高画質にこだわりすぎて顧客のニーズを見逃し、一方の韓国メーカーはデザインや薄型化に注力し、顧客にとってより魅力的な「体験」を提供することで、北米市場シェア1位2位を独占しました。

今の時代「こだわり」なんてそこらじゅうにありふれていて、それだけでは売れない時代なんです。

広告を通じて「体験」をイメージさせる重要性

広告においては、見ている人に対してどのような「体験」が得られるのかをわかりやすく伝えることが重要です。著者は、あるショッピングモールのレストランの成功事例を挙げています。1Fのエレベータホールに並ぶレストランのサインボードの中からお客様に選ばれなければなりません。そのレストランはサインボードに「夜景、無料プレゼント!」というキャッチコピーとともに、夜景の写真を貼りました。これにより、お客様は夜景を眺めながら美味しい料理を堪能する自分たちを想像したことでしょう。

また、ある居酒屋では宴会の広告を、写真と本文に工夫をしたことで、売上が倍以上に増加したと紹介しています。料理の写真ではなく、お座敷の写真に差し替え、本文も宴会がどのような環境で始まり、締めくくられていくのか、幹事さんがイメージできる広告にしました。

お客様は商品やサービス(モノ)が欲しいのではないということです。その先の、商品を使ったあとに起こること(体験)を欲しいと思っているのです。

「体験」を通じたお客様との関係性構築の重要性

「体験」を売ることによって、お客様との関係性を築くことが容易になります。趣味や出身地、好きなスポーツ、好きなアイドル、夏休みの予定など個人的な話題を共有することで、お客様との関係性を深めやすくなります。また、広告やPR活動においても、会社としての発信ではなく個人としての発信を行うことで、お客様は感情移入しやすくなるのです。著者は、「体験」を通じた関係性こそが企業の独自性や独自の価値であり、成功につながると強調しています。

まとめ

本書を通じて、商品やサービスのWebマーケティングにおいて、顧客が求めるのは単なる「モノ」の情報ではなく、その先に起こる「体験」を知りたいのだということを再認識しました。Webマーケティングにエクスマの考え方を取り入れることで、お客様と深い関係性の構築を目指し、そのことが企業の独自性や独自の価値として力を発揮するのです。ビジネスにおいては、商品やサービスの背後にある「体験」に焦点を当て、顧客とのつながりを大切にすることが、成功の鍵となるでしょう。